メダカ稚魚の飼育は、卵~成魚の成長段階のなかで1番難しいといわれます。
実際そのとおりで、簡単だから始めたメダカ飼育でも繁殖させて孵化した稚魚を0.8cm、1cmと成長させるのは初心者の方にとってハードルが高いです。
- 餌を食べているか心配
- 成長が悪く大きくならない
- いつの間にか数が減っていて生存率が低い
など、成魚とは違う飼育方法に戸惑ってしまう人も少なくありません。
難しい印象がある稚魚の飼育ですが、実は飼育環境を整えて適切な餌やりをするだけで生存率が大幅に上がります。
ここでは、稚魚を無事に成魚まで育てられるように、メダカ稚魚の飼い方・育て方を解説します。
餌はもちろん、水換え方法や飼育容器など、悩みやすいポイントの解決策をまとめました。
目次
メダカ稚魚の飼育環境を解説!
メダカ稚魚を飼育するためには、初めに飼育環境を整えることが重要です。
- 飼育容器の大きさや形
- 水質と水温
- ろ過フィルターの有無
- 日光や照明の必要性
など、成魚とは違い稚魚に合った環境を用意する必要があります。
稚魚を飼育するための土台になる内容なので、飼育方法の前に把握しておきましょう。
稚魚には大きな飼育容器がおすすめ
稚魚は小さいので飼育容器も小さいものを選びがちですが、大きい容器のほうが飼育しやすいです。
メダカ稚魚は成魚よりも水質の変化に弱いため、水換えが命取りになることも少なくありません。
基本的に水換えをせず安全な大きさ(1cm)まで育てるほうがよいです。
また、稚魚は栄養豊富なグリーンウォーター(青水)で飼育することが多いため、水換えで飼育水を薄めないためにも大きな容器が向いています。
稚魚の飼育でよく使う飼育容器は次のとおりです。
- 発泡スチロール
- プラ舟やトロ舟
- NVボックス
飼育容器の目安は5~10L程度です。2~3Lの容器でも飼育できますが稚魚が成長すると狭くなるので、どちらにせよ大きな飼育容器が必要になります。
また、飼育容器の形は開口部が広いほうが良いです。水面から酸素が溶け込みやすくなります。
稚魚に最適な水質と水温
メダカの稚魚は親と同様、中性~弱アルカリ性の水質を好みますが、幅広い水質に適応できます。
過度に酸性やアルカリ性に傾かなければ弱酸性~弱アルカリ性の水質で問題ありません。
水温は25~28℃が最適です。
水温の上昇が心配な場合は屋外飼育ならすだれ、室内飼育なら水槽用冷却ファンを使って高水温対策しましょう。
基本的に水換えは必要ありませんが、したほうがよいタイミングと方法、雨対策は後ほどご紹介します。
高水温対策は、こちらの記事でも解説しています。
ろ過フィルターは必要ない
メダカ稚魚の飼育では、ろ過フィルターを使用しません。
稚魚は水流に弱いうえに、吸い込まれる危険があります。
また、グリーンウォーターで飼育していると、ろ過フィルターの影響で薄まってしまうデメリットもあります。
水質の悪化や溶存酸素(水中に溶け込む酸素)が心配かもしれませんが、大きな飼育容器で飼育すれば問題ありません。
日光と照明が稚魚の成長を助ける
メダカの稚魚を丈夫に育てるためには日光が必要です。
日光を受けることで、成長をうながすビタミンAやビタミンDが体内で作られ発育がよくなります。
生存率も上がるので、1日8時間以上、できれば13時間前後(季節によって変わります)を目安に日照時間を確保しましょう。
室内飼育の場合は、照明を使って管理する必要があります。
メダカ稚魚に最適な餌の種類と与えるタイミング
「メダカ稚魚の生存率は餌やりで決まる」といっても過言ではありません。
メダカ稚魚の死因の大半は「餓死」によるものです。
ここでは、メダカの稚魚に与える次の5つの餌と与えるタイミングをご紹介します。
- 人工飼料(稚魚用)
- ゾウリムシ
- ミジンコ
- ブラインシュリンプ
- グリーンウォーター
それぞれ大きさが異なるので、稚魚の成長段階に合わせて選ぶことが重要です。
人工飼料(稚魚用):孵化後3日~1ヶ月
人工飼料は、稚魚飼育のメインになる餌です。
メダカの成長に必要な栄養を考慮して作られているため、栄養バランスに優れます。乾燥状態で保存しやすいのも嬉しい点です。
親メダカの餌をすり潰して与えることもできますが、潰し損ねた大きな餌を食べることができず底に沈んでしまいます。
水質の悪化につながることから、稚魚用の餌のほうが無難でしょう。
稚魚用の人工飼料は孵化後3日~1ヶ月の時期に与えます。
1ヶ月以降はパウダー状の餌であれば、親と同じものを食べられるようになります。
メダカの稚魚におすすめの餌は、こちらの記事でも詳しく解説しています。
ゾウリムシ:孵化後1週間~1ヶ月
ゾウリムシは非常に小さな動物プランクトンで、メダカ稚魚の餌として有名です。
孵化後2週間~1ヶ月の稚魚に積極的に与えましょう。
動きがあって好んで食べるため、人工飼料の食いつきがよくないメダカにもおすすめです。
人工飼料と違って生かしておく必要がありますが、難しくはありません。
1L程度(ペットボトルも可)の容器に入れエアレーションをすれば、常温で保存できます。
ゾウリムシは通販で入手可能です。ゾウリムシの餌には後ほどご紹介するグリーンウォーターをおすすめします。
ミジンコ:孵化後1ヶ月~成魚
ミジンコはゾウリムシよりも大きい微生物です。
稚魚に最適なのは、殻が柔らかい「タマミジンコ」と呼ばれる種類です。
稚魚の餌のなかでは少し大きいため、孵化後1ヶ月から食べられるようになります。
スポイトで吸ったり、目の細かい網ですくったりして与えましょう。
保存も簡単で、酸欠を防ぐために容器に弱めのエアレーション(強い水流が苦手)をして常温で管理できます。
ミジンコの餌は、グリーンウォーターがおすすめです。
田んぼや水辺で取ることもできますが、餌に不向きなケンミジンコやカイミジンコが入ってしまう可能性があるため、通販で入手する方法が一般的です。
ブラインシュリンプ:孵化後1ヶ月~成魚
ブラインシュリンプは、ミジンコと同じ微小な動物プランクトンです。
目には見えませんが殻を持つ甲殻類で、孵化後1ヶ月以降の稚魚に与えます。栄養価が高く稚魚の成長促進と丈夫な体作りに役立ちます。
乾燥卵の状態なので管理は簡単で、冷蔵庫に入れておくだけです。しかし、孵化させてから与える必要があるため、
- 3%前後の塩水
- エアレーション
- 日光や照明の光
という条件をそろえましょう。24時間もすれば孵化したブラインシュリンプを確認できます。
手間をかけたくない場合は孵化率が下がりますが、タッパーに塩水を入れて卵を入れるだけで孵化します。
メダカが少ないときにおすすめの方法です。
孵化したブラインシュリンプは次の方法で稚魚に与えましょう。
- 小さな容器にカルキを抜いた水道水を用意する
- 洗濯ばさみやクリップを使って容器にコーヒーフィルターを固定する
- ブラインシュリンプが光に集まる習性を利用してペンライトを外から当てる
- 集まったところをスポイトで吸う
- スポイトからコーヒーフィルターに移す
- 5分ほど経過して浸透圧で塩分が抜けたら再度スポイトで吸って稚魚に与える
そのままでは塩分があるため、コーヒーフィルターを使って一度水道水に移して塩分を抜くことを忘れないようにしてください。
ブラインシュリンプは孵化後、時間の経過とともに栄養が減少していくため早めに給餌することが大切です。
グリーンウォーター:孵化直後~成魚
植物プランクトンが豊富なグリーンウォーター(青水)は、孵化直後~成魚まで使える万能の餌です。
非常に小さく、孵化して餌を食べ始める段階から口に入れることができます。
グリーンウォーターは、次の方法で簡単に作ることができる点もおすすめです。
ただ、濃すぎるグリーンウォーターは稚魚によくないので「飼育容器の底が薄っすら見える程度」の濃さを目安にしてください。
作るのに手間をかけたくない場合は、通販でグリーンウォーターを入手できます。
ゾウリムシやミジンコの餌としても重宝します。
グリーンウォーターの作り方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
【実例】メダカ稚魚の餌やり方法
ここからは、実際のメダカ稚魚の給餌方法をご紹介します。
生存率が高い方法なので、稚魚がうまく育たない場合は参考にしてみてください。
孵化後~3日:餌をやらない
生まれたばかりの稚魚(針子とも呼びます)は、腹部にあるヨークサック(栄養)のみで成長します。
孵化して3日経過するまでは、餌をやる必要はありません。グリーンウォーターで飼育する場合は、この段階から飼育水にしておきましょう。
孵化後3日~1週間:稚魚用の人工飼料を与える
孵化して3日目から餌を食べるようになるので、稚魚用の人工飼料を与えましょう。
他の餌を食べられる大きさではないため、人工飼料のみです。
頻度と量は1日4回、1つまみの半分ほど。午前中に餌を1回与えて、昼に1回、午後2回とするとバランスよく給餌できます。
孵化後1週間~1ヶ月:人工飼料とゾウリムシを与える
孵化して1週間ほど経過するとゾウリムシを食べられる大きさになるので、人工飼料と併用して与えましょう。
1回に与えるゾウリムシの量は30mlが目安です。
餌やりの頻度と与え方は、
- 午前中に人工飼料を1回
- 昼はゾウリムシを1回
- 午後2回は人工飼料
といった方法をおすすめします。
孵化後1ヶ月以降:人工飼料とミジンコやブラインシュリンプを与える
1ヶ月を過ぎると1cm弱に成長するので、ミジンコやブラインシュリンプを食べられるようになります。
ミジンコとブラインシュリンプの使い分けとしては、稚魚の成長を優先する場合は栄養価の高いブラインシュリンプがおすすめです。
とはいえブラインシュリンプは、
- 孵化させる手間がかかる
- 孵化後栄養が失われていく(早めに給餌する必要がある)
- 淡水では生きられない(時間がたつと死ぬ)
といった扱いにくさもあります。手間をかけたくない場合は、ミジンコがおすすめです。
与える頻度は、
- 午前中に人工飼料を1回
- 昼はミジンコかブラインシュリンプを1回
- 午後2回は人工飼料
といったバランスがよいです。量は稚魚の数に合わせて調整します。
この段階になると、成魚用の餌を指で軽く潰したものも食べられるようになります。
メダカ稚魚の水換え方法
これまでにも少しお話ししてきましたが、メダカ稚魚の飼育では水換えをしないほうがよいです。
稚魚は繊細で、水質や水温の変化に強くありません。
また、グリーンウォーターで飼育していると、水換えによって必要以上に薄まってしまうことも少なくありません。
とはいえ、次の状況では水換えを検討します。
- 餌をやり過ぎて水質が悪化する可能性が高い
- 臭いがする、油膜が張っているなど明らかに水質が悪化している
- グリーンウォーターが明らかに濃い(容器の底が見えない)
水換えによるリスクよりも水質悪化による危険のほうが大きいので、水換えしたほうがよいでしょう。
その場合でも、一度に換える水の量は飼育容器の1/3にとどめ、水質が急変しないよう少しずつ入れます。
水質だけでなく水温も急変させないために、飼育容器の横に水換え用の水を1時間ほど置いて水温を合わせてから使用しましょう。
稚魚が1cm以上の大きさになれば、水換えしても問題ありません。
メダカ稚魚を死なせないための注意点
メダカ稚魚を死なせないための注意点と悩みやすいポイントをまとめました。
生存率が低かったり、これから繁殖に挑戦したりする場合に目を通してみてください。
ボウフラは稚魚を食べる
屋外飼育している場合は、ボウフラが湧いてメダカの稚魚を食べてしまうことがあります。
ボウフラは蚊の幼虫で、飼育容器に産み付けた卵が孵化することで発生します。
対策は次のとおりです。
- 防虫ネットで飼育容器を覆う
- スポイトで吸って成魚に与える
蚊の侵入を完璧に防ぐことは難しいですが、目の細かい防虫ネットを使う方法が効果的です。
蚊に卵を産み付けられる機会が減ってボウフラが減少するので、被害を大幅に抑えることができます。
すでに侵入してしまったものは見つけ次第、スポイトで吸って排除しましょう。メダカの成魚に与えるとよい餌になります。
水草はグリーンウォーターを薄める
稚魚が身を寄せたり、隠れ家にしたりする水草ですが、グリーンウォーターで飼育している場合は入れないほうがよいです。
水草が水中の栄養を吸収するため、植物プランクトンが増えにくい状態になりグリーンウォーターが必要以上に薄まります。
グリーンウォーターの恩恵を活かすなら、水草は入れないようにしましょう。
グリーンウォーターを使用せず、餌の種類と頻度で栄養状態を管理する場合は、むしろ水草の浄化能力が役に立ちます。
雨が入ると水質が急変して危険
水質や水温の変化に弱い稚魚にとって、雨は悪影響です。
地域によっては酸性よりの雨が降ることもありますし、大雨なら水温が低下することも少なくありません。
メダカ飼育の雨対策は、こちらの記事で解説しています。
稚魚同士の共食いを避ける
メダカの稚魚は個体によって成長速度が違うため、体長に大きな差ができれば共食いしてしまうこともあります。
共食いを避けるためにも大きな稚魚は別の飼育容器に移しましょう。移動させる目安は1cm程度です。
また、普段からしっかり餌をやることで共食いする可能性を減らすことができます。
成魚と一緒にするなら1.5cmになってから
稚魚が増え飼育スペースが圧迫されると成魚の飼育容器に移したくなりますが、1.5cmほどに成長してからにしましょう。
それ以下の大きさでは成魚が食べてしまう危険があります。
もし、成魚が小さいメダカを追いかけるようなら、隠れ家になる水草を入れてあげましょう。
- ホテイアオイ
- アマゾンフロッグビット
- マツモ
- アナカリス
といった水草が丈夫で育成しやすいためおすすめです。
メダカにおすすめの水草は、こちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ:メダカ稚魚の飼い方・育て方!おすすめの餌・水換え・飼育容器と生存率を上げる方法
メダカ稚魚の飼育方法を解説してきました。
稚魚はメダカの成長段階のなかで1番飼育が難しいですが、飼育環境を整えて適切な餌やりをすることで生存率を大幅に上げることができます。
メダカ稚魚が死んでしまう1番の原因は餓死なので、稚魚用の人工飼料と生き餌を併用しながら、
- 孵化後~3日:餌をやらない
- 孵化後3日~1週間:稚魚用の人工飼料を与える
- 孵化後1週間~1ヶ月:人工飼料とゾウリムシを与える
- 孵化後1ヶ月以降:人工飼料とミジンコやブラインシュリンプを与える
といった方法で餌を与えてみてください。
ただ、手を掛ければ掛けるほど成長具合で答えてくれるのが、メダカ飼育の面白いところです。
稚魚の飼育や繁殖、品種改良など、メダカの飼育を存分に楽しみたい方は、今回ご紹介した方法を実践してみてください。