メダカを飼育していると「いつもと様子が違う」と感じる場面があります。
泳ぎ方は元気がないし、底のほうでじっとして動かない。餌も食べずに心配。
そのようなメダカの不調には「塩水浴」が効果的ですが、いざ始めようとすると次のような悩みがでてきます。
- 塩と水の量はどのぐらい?
- 期間はいつまで?
- 餌やりや水換えはしたほうがいい?
- 回復したら元の水槽にどうやって戻す?
ここでは上記の疑問を解決するために、メダカを塩水浴させる方法をご紹介します。
目次
メダカの塩水浴には「回復力を高める効果」がある
メダカを塩水浴させるタイミングとしては、調子が悪かったり、病気の可能性があったりなど、体調不良のときに行います。
実は塩水ではメダカの不調や病気の原因を直接治すことはできません。
しかし、メダカ自身が持つ回復力を高める効果があります。
塩水浴で浸透圧調整の負担が減る=メダカの回復力が高まる
塩水浴させることでメダカの回復力が高まるのは「浸透圧調整の負担が減る」ためです。
- 浸透圧とは
- 濃い液体と薄い液体があった場合に、水分は薄いほうから濃いほうへ移動します。この水が移動するときの力を浸透圧と呼びます。
普通に飼育しているとメダカの体液が濃く、周囲の飼育水が薄いため、浸透圧によってメダカの中に水分が移動しようとします。
とはいえ、多量の水が体内に入ってくると生死にかかわるので、
- 皮膚で過剰な水分の侵入を防ぐ
- 薄く多量の尿をして水分を排出する
といった方法で浸透圧を調節しています。
そこで「塩水浴」です。
飼育水に塩を入れることでメダカと飼育水の濃度の差が少なくなることから、浸透圧調節に使う体力を抑えられます。
温存した体力は体調不良を治す力に使うことができるため、回復力が高まります。
まとめると、
- メダカは普段から浸透圧調節に体力を使っている
- 塩水浴によってメダカと飼育水の濃度差が小さくなる
- 浸透圧調節に使っている体力が少なく済む
- 温存した体力を回復力にあてられる
といった流れになります。
メダカの塩水浴の方法と塩水の作り方
ここからは、「メダカを塩水浴させる方法と塩水の作り方」を実際の手順にそってご紹介していきます。
1. 隔離容器と塩を用意する | 水量と塩分濃度の調整
塩水浴を始める前に「隔離容器」と「塩」を用意しておきましょう。
元の水槽で塩水浴しない理由
元の水槽に直接塩を入れると水草が枯れたり、エビが死んだりなど、環境がくずれてしまうので、隔離容器で行います。
容器は1~10Lの水が入れば、バケツでもプラスチックケースでも問題ありません。
塩水浴させるメダカが1~5匹の場合は1~5L、5~10匹であれば5~10Lの容器がおすすめです。「メダカ1匹に1L」が目安です。
心配であれば「メダカの塩水浴用の塩」が観賞魚メーカーから販売されているので、そちらを使ってみてください。
塩水浴では塩分濃度を0.5%に調節するので、「水1Lに塩5g」を目安に塩を用意します。
隔離容器の水が2Lなら10g、5Lなら25g、10Lなら50gといった具合です。
計量には電子ばかりが便利ですが、なければ計量スプーンでも測れます。
計量スプーンの小さじ1杯(山盛りではなく平らにすりきった状態)で5~6gです。
より正確に計量したい場合、塩水浴用の塩であれば計量用のスプーンが入っていて塩分濃度を調節するときにも便利です。
計量できたら小皿やプラスチックケースなど、小さな容器に塩を入れておきます。塩を水に溶かす方法は後ほど解説します。
2. 隔離容器に水道水を入れ塩素を抜く
用意した隔離容器に水道水を入れます。
水量は塩分濃度を調節するときに必要なので、覚えておきましょう。
バケツに水量がわかる線が入っているタイプが便利ですが、わからない場合は500mlや1Lのペットボトルを使えば簡単に計量できます。
水道水には魚に有害な塩素が(カルキ)が入っているため、必ずカルキ抜きを入れて除去しておきます。
3. メダカを隔離容器に移動させる
塩水浴させたいメダカを隔離容器に移動させます。
水槽から直接移すと水温と水質の急変によるショック症状(水温ショック・pHショック)を起こす危険性があるので、「水温合わせ」と「水合わせ」が必要です。
- 元水槽の少量の水と一緒にメダカを小さな容器に移す
- メダカ入りの容器を隔離容器に30分ほど浮かべる(水温合わせ)
- メダカ入り容器に隔離容器の水を少しずつ入れる(水合わせ)
メダカを入れる小さな容器は、料理に使うプラスチックのボールや袋でもかまいません。
メダカと一緒に入れる元水槽の水は、メダカが泳げる程度の少量で十分です。
隔離容器の水をメダカの入った容器に入れる場合は、
- スポイト
- 調理器具のおたま
- 大きめのスプーン
など、水を少しずつ移せるものを使いましょう。もしくは、メダカ入り容器を少し傾けて水を入れていくのも1つの手です。
水を入れるときは一度ではなく、5~10回にわけて30分程かけて移していきます。
一度に多量の水を入れるとショック症状につながるので注意してください。水温合わせと水合わせが終わったら、メダカを水ごと隔離容器に移します。
≫【熱帯魚やメダカ】簡単で魚にやさしい水合わせ方法!pHショックの危険性も解説
4. 塩を溶かして数回に分けて入れる
メダカを隔離容器に移動できたら、塩を溶かしていきます。
隔離容器の水を少し取って、塩が入った容器に入れます。塩が溶け残らなければ問題ありません。
完成した塩水は数回にわけて、メダカの入った隔離容器に入れていきましょう。一度にドバっと入れると、急に塩分濃度が高くなってメダカによくありません。
もしくは「コーヒーフィルター」を使って少しずつ塩を溶かす方法もおすすめです。
コーヒーフィルターに塩を入れて、洗濯ばさみなどで容器に挟むようにして置いておくと塩が少しずつ溶け出していきます。
メダカの入った隔離容器に塩水を入れ終われば「塩水浴」の環境が整います。
5. 塩水浴の期間は5日前後
塩水浴の期間は5日前後が目安です。
効果が表れるまで時間がかかるので早くても3日、長ければ7日ほど様子を見ましょう。メダカの状態が回復に向かっているかどうかは、
- 元気に泳ぎ始める
- 餌に興味を示す
など、普段の状態に近付いていれば体調は改善傾向です。
一方で、1週間経過しても体調不良から回復しない場合は、体表やヒレなどに病気の症状が現われていないか確認しましょう。
塩水浴は目に見えない体調不良に対して行うことが多いですが、その異変が病気の初期症状であることも珍しくありません。
病気によっては初期症状であれば、塩水浴で回復することもあります。
しかし、効果が薄く回復力を高めるだけでは改善が見込めないようであれば、「薬浴による治療」が必要です。
6. 塩水浴から元の水槽への戻し方
メダカが無事に回復したら元の水槽へ戻しましょう。
このときも隔離容器から水槽へ急に移すと水質や水温、塩分濃度の違いでメダカが弱ってしまう危険性があるため、少しずつ慣れさせる必要があります。
メダカを元の水槽に戻す手順は次のとおりです。
- 隔離容器を元水槽の近くに置いて水温を合わせる
- 隔離容器の水を1/3ほど抜く
- 抜いた水の量だけ元水槽の水を入れる
この手順を1日1回、3日間にわたって行います。水を抜くといっても少量なので、容器を傾けて捨てたり、オタマですくったりする方法で問題ありません。
元水槽の水を加えるときは、水質や塩分濃度を急変させないよう30分ほど時間をかけて少しずつ入れていきます。
メダカを塩水浴させるときの注意点
メダカを塩水浴させるときの注意点を4つご紹介します。
- 2日に1回水換えをする
- 餌やりをしない
- エアレーションは弱めならおすすめ
- 塩水浴で効果がないなら薬浴に移行する
塩水浴で悩みやすいポイントでもあるので、実践する前に目を通してみてください。
2日に1回水換えをする
塩水浴中は、2日に1回水換えをします。
水換えを頻繁に行う理由
隔離容器には水中の有害なものを分解してくれるバクテリアがいないため、水の汚れるペースが早いです。ろ過フィルターもないので、こまめに水換えしてきれいな水質を維持する必要があります。
水換えをする場合は、容器の1/3~1/2の水量を目安にしましょう。
水道水を使ってしまうと、塩分濃度が下がって塩水浴の効果が薄れてしまうため、0.5%の塩水を水換え用の水として使います。
新しい水は隔離容器の横に置いて水温を合わせた後、水質が急変しないよう数回に分けて30分ほどかけて入れていきます。
≫メダカの水換えは1ヶ月に何回がベスト?理想の水換え方法と頻度・水量を解説!
餌やりをしない
塩水浴中の餌やりは基本的に控えます。
とくに餌を与えても興味を示さない場合は、やればやるほど水が汚れる原因になります。
塩水浴を始めて2~3日経過したら少しだけ餌をやってみて、食べる素振りをみせるか確認してみてください。
食べるようであれば、食べ残しが出ないよう少量を与えます。
無事に回復して水換えしつつ元水槽に移す準備をしている期間は、餌を与えても問題ありません。
≫メダカの餌やりは1日何回がベスト?理想の回数と餌の与え方を解説します
エアレーションは弱めならおすすめ
水中に酸素を供給するためのエアレーションは弱めならおすすめです。
エアレーションが強いと水流ができるため、メダカが泳ぐことに体力を使うことになります。メダカは強い流れが苦手なうえに、ただでさえ弱っている状態なので負担を減らしてあげましょう。
とはいえ、メダカが体力を使わない程度のエアレーションであれば、酸素を供給できておすすめです。
エアレーションのためのエアーポンプは、空気の量を調節できるタイプがおすすめです。
塩水浴で効果がないなら薬浴に移行する
塩水浴で効果がない場合は、魚病薬を使った薬浴に移行することも検討しましょう。
塩水浴はあくまで回復力を高めるもので、寄生虫や病原菌といった原因を直接たたくものではありません。
- 5日前後様子を見て少しも回復していない
- 塩水浴中に病気の症状が現われた
といった場合は薬浴をおすすめします。
メダカがかかりやすい病気の症状と治療・薬浴の方法は、以下の記事で解説しています。
≫メダカがかかりやすい病気の種類と治し方 | 症状から治療・薬浴まで
まとめ:メダカの塩水浴の方法と塩水の作り方 | 回復までの期間と元の水槽への戻し方とは
今回は、メダカを塩水浴させる方法をご紹介しました。
淡水から濃度を調節した塩水に換えることで、メダカが「浸透圧調節に使う体力の消耗を抑え回復力にあてられる」ことが塩水浴の効果と目的です。
回復力の底上げなので治療ではありませんが、体調不良や病気の初期症状を改善することができます。
塩は魚病薬と違って扱いやすいため、異変を感じたら塩水浴で様子を見るのもおすすめです。
たとえ薬浴に移行しなければいけない場合でも、塩水浴のために用意した隔離先の環境でそのまま薬浴できます。
- 回復力が高まる
- 素早く薬浴に移行できる
といったメリットは健康維持や長期飼育に欠かせないことなので、メダカの管理方法の1つとして塩水浴を取り入れてみてください。