オヤニラミは日本在来の淡水魚で、人によく懐き、仕草に愛嬌もあることから人気があります。
一方で、目にする機会が多くないうえに気性が荒い一面を持っているので、
- アクアショップで一目ぼれしたけれど飼い方がわからない
- 気性が荒いけど混泳は大丈夫?
- 人工飼料に餌付かせられない
といった疑問を持つ人も少なくありません。
そこで、今回は最適な水槽サイズ・餌・混泳方法をふまえて、「オヤニラミの飼い方と飼育設備」をご紹介します。
目次
オヤニラミの特徴と生態
はじめにオヤニラミの特徴と生態をご紹介します。
大きさや食性といった情報は、水槽サイズや餌の種類など飼育環境に直結するので、飼育を始める前に確認しておきましょう。
オヤニラミは日本に生息する淡水魚
オヤニラミはスズキ目ケツギョ科の淡水魚で、日本の在来種です。
大きさは8~10cm程度、大きなものでは15cm前後に成長します。寿命は5年ほど。
肉食性で、魚類やエビなどの甲殻類、昆虫類などを捕食します。
京都以西に分布していて、
- 中国地方
- 四国地方
- 九州地方
といった地域に生息しています。
日本の河川では中~下流域に生息していて、比較的流れの緩やかな場所を好みます。
オヤニラミは、自分で捕まえて飼育することもできます。
オヤニラミの捕まえ方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
滋賀県でオヤニラミを飼育するには届け出が必要
滋賀県ではオヤニラミが指定外来種とされているため、飼育には届け出が必要です。
滋賀県は本来の生息地ではないにもかかわらず、野洲川やその他河川にも定着してしまっているので、これ以上拡散させないために飼育が規制されています。
その他の地域では規制されていませんが生態系に悪影響を与えるので、放流しないようにしましょう。
オヤニラミの飼い方と飼育設備
ここからは、オヤニラミの飼い方と飼育設備をご紹介していきます。
具体的には次のとおりです。
- 水温と水質
- 水槽サイズ
- ろ過フィルター
- 照明
- 餌の種類
- 流木や石などの隠れ家
- 底砂
- 水草
実際に飼育して改善を繰り返してきた飼育方法なので、目安にしてみてください。
オヤニラミに最適な水温と水質
オヤニラミに最適な水温は23℃で、15~28℃の範囲であれば問題なく飼育できます。
10℃を下回ると活性が下がり5℃前後になると越冬に入って餌を食べたり、動いたりすることが少なくなります。
一方で、高水温には弱いため、夏は注意が必要です。一時的に30℃を超えてもすぐに死んでしまうことはありませんが、続くと負担になります。
28℃を超えたら水槽用の冷却ファンを使って水温を下げましょう。90cm以上の水槽の場合は水槽用クーラーを使うこともあります。
水質にうるさい魚ではないため、中性付近であれば問題なく飼育できます。
水道水はほぼ中性なので、定期的な水換えをすることで大きく酸性・アルカリ性に傾くことを防げます。
水換えの頻度
水換えの頻度は2~3週間に1回が目安です。
水量は水槽の1/3程度。一度に大量の水を変えてしまうと水質が急変してショック症状(pHショック)を起こしてしまうため、注意しましょう。
プロホースがあると水換えの労力が少なく済みます。
水槽サイズは45cm~60cm
オヤニラミ1匹だけの単独飼育なら、45cm水槽で飼育できます。
オヤニラミ同士を混泳させる場合は最低でも60cm、できれば90cm水槽を用意しましょう。
気性が荒く縄張り意識が強い魚なので、狭い水槽では逃げ場がなく一方的に攻撃を受けてしまいます。
また、他の魚種と混泳させる場合も、60cm以上の水槽が良いです。
ただ、ドジョウなど餌の食べ残しを食べてくれる魚であれば、45cm水槽で2~3匹混泳させても問題ありません。
同種・他魚種との混泳については、後ほど詳しく解説します。
45cm以上の水槽は重量があるので、安全面を考えて水槽台を用意しましょう。
水槽の置き場所の決め方や立ち上げ方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
ろ過フィルターは上部フィルターがおすすめ
ろ過フィルターは上部フィルターがおすすめです。
ろ過能力はもちろん、酸素供給量が多く、酸欠に弱いオヤニラミには最適です。
投げ込み式や外掛け式でも飼育できますが、ろ過能力が高いわけではないので、水換えの頻度は高まります(週に1~2回程度)。
上部フィルターは、45cmや60cm水槽用など、水槽サイズによって大きさが変わります。
照明は熱帯魚用の安価なもので十分
照明は、オヤニラミのバイオリズムを整えるはたらきがあるので、用意しましょう。
点灯時間は1日8~10時間が目安になります。
繊細な水草と一緒に飼育することがなければ、熱帯魚用の安価な照明で十分です。
餌は人工飼料と生き餌!
餌は人工飼料をメインに、必要に応じて生き餌を与えます。
人工飼料は栄養バランスを考えて作られているうえに、保存しやすいので扱いやすいです。
水槽に入れて間もないころは、
- メダカ
- 小赤(金魚)
- エビ(ミナミヌマエビ、スジエビ)
などの生き餌を与えて環境に慣れさせましょう。
人が近付いても逃げなくなったタイミングで人工飼料に挑戦します。人工飼料はカーニバルが最適です。
人工飼料や生き餌はアクアショップや通販で購入することができます。
人工飼料の餌付け方
オヤニラミの飼育では、人工飼料の餌付けでつまずくことも少なくありません。
ここでは、カーニバルを使った人工飼料の餌付け方法をご紹介します。
具体的な手順は次のとおりです。
- 生き餌に慣れさせる
- ピンセットで生き餌を与える
- ピンセットで人工飼料を与える
前提としてオヤニラミが安心して餌を食べる環境が必要です。
生き餌の種類はなんでもよいので、人前で餌を食べる習慣を付けさせましょう。
問題なく生き餌を食べるようになったら、次はピンセットを使って生き餌を与えましょう。ピンセットで挟んでいるものを餌として認識するようになります。
ピンセットから生き餌を食べるようになれば、次はピンセットで人工飼料を与えます。
この段階になれば問題なく口にすることが多いですが、吐き出してしまうことも少なくありません。
食べなかった餌は水質悪化につながるため、網で取り除きましょう。
2~3日試しても吐き出すようであれば、生き餌と人工飼料を交互に与えてみてください。個体差があるものの高確率で餌付きます。
最終的には水槽に人工飼料を落とすだけで食べるようになります。
流木や石など隠れ家は必要
オヤニラミは流木や石といった隠れ家を好みます。
自然の川でも岸際の植物(ボサ)や川底の石・岩が主な住処です。
自然な見た目がお好きな方は流木や石がおすすめですが、ホームセンターで入手できる塩ビパイプも相性がよいです。
底砂は扱いやすい大磯砂が最適!川砂もおすすめ
底砂は水質をきれいにしてくれるバクテリアの住処にもなるので、敷くメリットは大きいです。
なかでも「大磯砂」は粒がくずれてしまうことがないため、長期間使い続けることができます。安価で入手できるうえに、和風な見た目もオヤニラミとよく合います。
水換えの際に吸ってしまいやすいデメリットはありますが、雰囲気重視であれば川砂もおすすめです。
水草はアナカリスやカボンバ!なくてもOK
水草は好みで入れましょう。
なくても問題ありません。
入れる場合は育成しやすい、
- アナカリス
- カボンバ
- マツモ
- ウィローモス
といった種類がおすすめです。
どれもオヤニラミと同じ水温で育成できますし、強い光量も必要ありません。
オヤニラミの混泳について
オヤニラミは気性が荒い魚なので、混泳には注意が必要です。
ここでは、実際に混泳に成功した方法をもとに、オヤニラミ同士の混泳と他魚種との混泳について解説します。
オヤニラミ同士の混泳(同種混泳)
オヤニラミは原則、単独飼育になります。
気性が荒い魚ですが、同種に対して強い攻撃性を示します。
同じ水槽に複数いると、けんかは避けられません。それでも混泳させたい場合は、次の飼育環境が条件です。
- 水槽サイズは最低60cm、できれば90cm以上
- 隠れ家をたくさん入れる
- オヤニラミの数は3匹以上
狭い水槽では弱い個体の逃げ場がなくなるので、大きい水槽が必要です。
攻撃されてもすぐに逃げ込める隠れ家をたくさん入れます。
また、オヤニラミの数が少ないと一方的にいじめられる個体がでてくるので、3匹以上入れます。
ただし、オヤニラミ同士の混泳はどうしてもストレスがかかってしまうので、最適は単独飼育です。
個体によってはうまくいかない可能性もあるため、混泳させる場合は隔離できる水槽を用意しておくことをおすすめします。
他魚種との混泳(異種混泳)
オヤニラミは肉食性の魚なので、口に入る大きさの小魚やエビとは混泳できません。
また、遊泳層(泳ぐ水深)が被りがちな魚種も争いにつながることがあります。
おすすめは大きめのドジョウ(シマドジョウ)です。
餌の食べ残しを食べてくれるので重宝します。見た目が特徴的で底層を泳ぐことから、攻撃対象になることもほぼありません。
タナゴ類は成魚であれば混泳できます。
その他にも、
- オイカワ
- ヨシノボリ
- カマツカ
- ムギツク
といった魚種で混泳に成功しています。
ただし、個体によって異なるため、すべてのオヤニラミで確実に成功するわけではありません。
ドジョウとシマドジョウは、身近な水辺で捕まえて飼育することもできます。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
オヤニラミの繁殖について
オヤニラミは水槽内で繁殖させることができます。
オヤニラミが繁殖する環境を動画で確認する
こちらは、野生のオヤニラミの繁殖シーンを撮影した動画です。
産卵しやすい環境や雌雄の特徴など繁殖に欠かせないことがわかるので、ぜひご覧ください。
動画の概要欄には実際の繁殖期や水温、産卵場所などの参考情報を載せています。
繁殖期と雌雄判別
オヤニラミの繁殖期は水温が上昇する5月以降。
9~10月になって水温が下がると繁殖を終えます。
この時期に水槽に3匹以上のオヤニラミを混泳させてペアを作らせましょう。とはいえ、オスとメスの判別は簡単ではありません。
目安は次のとおりです。
- お腹の丸みが控えめ
- 体色が黒みを帯びる
- 赤や青といった模様が際立つ
- 縄張り意識が強くなる
- お腹が丸みを帯びる
- 比較的縄張り意識が強くならない
この他にも、繁殖期のオスは産卵場所を掃除する習性があるので、コケや汚れをはらうような行動をしていればオスの可能性が高いです。
繁殖行動
ペアになるとオスがメスを産卵床に迎え入れ、産卵をうながします。
ろ過フィルターのパイプや流木など、水槽内にあるものに産卵することが多いです。卵を隔離する場合は、産卵用の細い塩ビパイプを入ることをおすすめします。
産卵後はメスか卵を隔離する
産卵後は、オスが卵を守ります。
メスはオスの攻撃対象になるため、別の水槽に移動させましょう。
一方で卵を移動させる場合は、孵化用の隔離水槽を用意しておく必要があります。
オスが卵の世話をしてくれるわけではないので、エアレーションの泡が卵に当たるように調節してゴミが付着しないようにしましょう。
水温22℃前後であれば、7~10日ほどで孵化します。
稚魚の餌はブラインシュリンプ
孵化して2日程度はお腹の栄養(ヨークサック)があるので、餌を与える必要はありません。
その後は乾燥したブラインシュリンプの卵を孵化させて与えます。大きさが1.5cmほどに成長したら冷凍赤虫をメインの餌にしましょう。
オヤニラミの入手方法
オヤニラミの入手方法は次の3つです。
- アクアショップで購入する
- 通販で購入する
- 自分で捕まえる
熱帯魚を販売しているアクアショップやペットショップがあれば、オヤニラミを販売していることも少なくありません。
足を運べる範囲に実店舗がなければ通販で購入することもできます。
また、日本に生息しているので、網を使ったガサガサや釣りで採集することも可能です。「自分で捕まえたものを飼育したい!」という方におすすめの入手方法といえます。
まとめ:オヤニラミの飼い方と飼育設備をご紹介!最適な水槽サイズ・餌・混泳方法とは
オヤニラミの飼い方と飼育設備をご紹介しました。
高水温や混泳に注意する必要はありますが、その他は水質にうるさくなく餌もよく食べる飼いやすい魚です。
慣れると餌をねだったり、こちらの動きにあわせて体を動かしたりと、愛嬌を発揮してくれます。
今回ご紹介した飼育方法であれば、初心者の方でも問題なく飼育できるので、ぜひ、オヤニラミの飼育に挑戦してみてください。