パラダイスフィッシュは青にオレンジ色のバンドが入る美しい魚です。
丈夫で飼育しやすい初心者の方に自信をもっておすすめできる魚種ですが、飼育や繁殖に関する情報は多くありません。
そこで、ここでは、
- 飼育方法を知りたい
- 繁殖させたい
という方向けに、パラダイスフィッシュ(タイワンキンギョ)の飼育・繁殖方法を徹底解説します。
飼育はもちろん、繁殖させて稚魚を成魚まで成長させた経験をもとにお話しします。
目次
パラダイスフィッシュとは
『パラダイスフィッシュ』は“タイワンキンギョ”とも呼ばれる魚で、中国や台湾などの東アジアや東南アジアが原産です。
日本でも沖縄に生息していますが、個体数が少なく絶滅危惧種に指定されています。
大きさは5~8cm程度。体色は青地にオレンジ色のバンドが入ってとてもきれいです。
熱帯魚のベタに近い種類ということもあって気性が荒く、同種には攻撃性を示すことも珍しくありません。水面から酸素を取り込めるラビリンス器官を持っているので、酸素が少なく酸欠の危険がある場所にも生息することができます。
パラダイスフィッシュの種類
パラダイスフィッシュには、いくつか種類があります。
一般的なのは、
- パラダイスフィッシュ
- パラダイスフィッシュ(アルビノ)
- ブラックパラダイスフィッシュ
この3種類。
パラダイスフィッシュは今回の主役にあたる種類です。
パラダイスフィッシュ(アルビノ)は改良品種で、白い体に赤い目とオレンジのバンド入る点が特徴。飼育方法は同じですが、視力が弱く餌を食べるのが下手だったり、繁殖にコツがいったりと難易度は少し高めです。
ブラックパラダイスフィッシュは改良品種ではなく別種で、名前通りの黒っぽい体色が特徴です。
バンドはなくウロコの縁取りが目立ち、どこか古代魚チックな雰囲気があります。こちらも、同じ飼育方法で飼育可能です。
パラダイスフィッシュの飼育方法
パラダイスフィッシュは丈夫で水質の変化・酸欠にも強い魚です。
とはいえ、魚に合った環境で飼育した方が健康面でも良いですし、より長生きします。
ここでは、
- 水温や水質
- 底砂や水草の有無
- 照明時間
- 餌の種類
など、最適な飼育環境や飼育方法を解説します。
水温は20~28度
水温は20~28度に調節しましょう。
できれば25~28度がベストです。低温にも耐性があるので、15度程度まで水温が下がっても飼育できますが、それ以下になると活性が下がって体調をくずしてしまう個体が出てきます。
安全に飼育するなら冬の間は水槽用ヒーターを使った方が良いです。夏場の高水温は35度前後であれば問題ありません。
ただ、高水温が続くと消耗してしまうので、室内でも比較的温度が上がらない場所(玄関など)に水槽を置くことをおすすめします。
また、水質にはうるさくないので、過度に酸性・アルカリ性に傾いていなければ飼育できます。水槽のサイズと魚の数にもよりますが、水換えは2~3週間に一度が目安です。
- 小型水槽で魚の数が多い(例:30cm水槽に10匹)
- コケがよく生える
- 水がにごる(臭う)
といった場合は、水質が悪化しやすい、もしくはすでに悪化しているので、水換えの頻度を高めた方が良いでしょう。
底砂は粒に角がないタイプにする
底砂を敷く場合、底砂は粒が角ばっていない種類を選びましょう。
パラダイスフィッシュはヒレが伸びる(特にオス)ので、角が目立つ底砂ではヒレを擦って傷付いてしまうことがあります。
- 赤玉土
- 大磯砂
- ソイル
このあたりがおすすめです。底砂を敷かないベアタンク水槽でも飼育できますよ。
水草はお好みで
水草は必要なものではないので、入れるかどうかは好みで決めても良いです。
ただ、同種を混泳させる場合は、ケンカが起きた際の隠れ家として入れた方が良いでしょう。
水草の種類は、
- アナカリス
- カボンバ
- マツモ
- ウィローモス
このあたりが丈夫で強い照明も必要ないので、おすすめです。
水流は弱めに調節する
パラダイスフィッシュは長いヒレからもわかる通り強い水流が苦手なので、ろ過フィルターを弱めに設定します。
外掛け式であれば水量を調節できるタイプが最適です。
上部式や外部式の場合は、吐出口の向きを水槽面に当たるようにしたり、水草や流木などで流れを遮ったりして調節します。
照明時間は8時間が目安
照明は日光の代わりをして生き物のバイオリズムを整えます。
8時間を目安に調節しましょう。あまり長時間点灯すると、コケの発生につながるので控えた方が良いです。
餌は浮上性の種類がおすすめ
餌は水面に浮く「浮上性」がおすすめです。
底に沈んだ餌を食べることもできますが、口の構造上、水面に浮いているものの方が向いています。時間をかけて沈むタイプでも問題ありません。
粒の大きさはパウダー状よりも顆粒状、もしくはフレークタイプが良いですね。
餌に関しては神経質なタイプではなく、
- 熱帯魚用
- 川魚用
- 生餌(赤虫など)
など、なんでもよく食べます。こだわらなくても良いのですが、選択が難しい場合はベタ用の餌がおすすめです。
頻度は1日に2回、2~3分で食べられる量が目安になります。
パラダイスフィッシュの混泳相手について
パラダイスフィッシュは気性が荒いので、「混泳」には注意が必要です。
ここでは、
- 同種混泳
- 他種混泳
この2つに分けて解説します。
同種との混泳
パラダイスフィッシュは同種に対して攻撃性を示すことが多いので、あまり向いていません。
ベストは単独飼育です。ただ、過密気味に5匹~10匹飼育すると、特定の個体がいじめられることが少なく、なわばりも作りにくいため、混泳させられるケースがあります。
実際に10匹ほど混泳させていますが、問題なく飼育できています。それでも、けんかが起こったときの隠れ家として水草や流木などは多めに入れた方が良いです。
注意点としては、繁殖期のオス(泡巣を作っている)の場合、気に入ったメス以外は強く攻撃してしまうため、混泳はできません。
他種との混泳
他種との混泳は種類を選べば可能です。
近縁のベタやチョウセンブナ、グラミーは攻撃対象になる可能性が高いです。一方で、大きさや体型が似ていなければ混泳は難しくありません。
加温飼育であれば小型熱帯魚、無加温飼育ならドジョウがおすすめです。食べ残しを処理してくれるお掃除生体にもなってくれますよ。
ドジョウは自分で捕まえて飼育することもできます。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
パラダイスフィッシュの繁殖方法
パラダイスフィッシュは繁殖に挑戦できる魚です。
コツさえつかめば難しくはありません。稚魚を育てられる飼育設備を整えることができて、そのうえで挑戦してみたい方は参考にしてみてください。
水温と照明時間を調節する
水温と照明時間を調節して繁殖に適した「繁殖用水槽」を用意します。
パラダイスフィッシュは水温が上がる6~9月頃に繁殖期を迎えます。加温しなくてもこの時期になれば繁殖しますが、水温が安定しないようであれば加温しましょう。
目安は26~30度です。水温の上昇は繁殖を誘発させる大きな要因なので、とても重要。
照明は12時間と少し長めに設定します。また、ペアになる際にオスがメスを追いかけ回すため、消耗しすぎないよう水草や流木、塩ビパイプといった隠れ家も入れておきます。
繁殖は体力を使うので、餌は普段よりも多めに与えましょう。
オスとメスを同じ水槽に入れる
環境が整ったら初めにオスを繁殖用水槽に入れます。
水合わせと水温合わせは必ず行いましょう。成熟していれば、早くてその日のうちに水面に泡巣(ほうそう)を作ります。口からポコポコ泡を吐き出す姿は、なかなか興味深いですよ。
繁殖の舞台が整ったら、メスを同じ水槽に加えます。
オスとメスの区別は、
- オス:背ビレと尻ビレ、尾ビレの先が長く伸びる
- メス:オスほどヒレが伸びず、お腹が膨れる
といった点で見分けることができます。
ペアの相性を確認する
パラダイスフィッシュの繁殖で1番大切なのは「ペアの相性」です。
相性が良ければ一緒にしたその日のうちに繁殖しますが、悪ければオスがメスを追いかけ回して弱るだけです。1週間様子を見て変わりなければ、別のメスと入れ替えて再び様子を見ましょう。
メスがひどく消耗しているようなら、その場で水槽から出した方が良いです。うまくいくと、オスにメスがからみ産卵します。
産卵したメスは別の水槽に移動させる
産卵を確認したら、その場でメスを別の水槽に移動させてください。
そのままにしていると、卵を守るオスに攻撃されて最悪の場合死んでしまいます。
稚魚が自分で泳ぎ出したらオスを移動させる
2~3日経過すると孵化して稚魚が動き出します。
このときは、まだ泳ぎもままならないので、泡巣に引っ付いています。巣から落ちたり離れようとする稚魚はオスが口に含んで巣に戻します。子育て熱心ですね。
稚魚が巣から離れてそれぞれ泳ぎ出したら、オスを別の水槽に移動させます。
パラダイスフィッシュ稚魚の飼育方法
パラダイスフィッシュの稚魚は成魚と比べると飼育がやや難しいです。
とはいえ、餌の種類を間違わなければ成魚まで成長させることができます。
餌やりは5~7日が経過してから
餌やりのタイミングは孵化後5~7日経過してからにしましょう。
孵化して数日はお腹にあるヨークサック(栄養)で育ちます。できれば、孵化後3~4日頃に小さなゾウリムシを与えるとより良いですよ。
餌の種類は人工飼料と生き餌
稚魚に与える餌は「ブラインシュリンプ」がメインです。
通販で乾燥した卵を入手できるので、孵化させて与えます。目安は1日に2回。
稚魚はよく餌を食べるうえに、この時期の餌の量が成長具合を左右するため「食べたいときに餌がある状態」がベストです。
しばらくして、少し大きくなってきたら稚魚用の餌を与えます。メダカ稚魚用の餌がそのまま使えて便利です。
2cm前後まで成長したら親に与えている餌をつぶして給餌しても良いですよ。
水換えはできるだけ控える
繁殖初挑戦でやってしまいがちな失敗が、「水換えによる大量死」です。
丈夫なパラダイスフィッシュとはいえ、稚魚は水質に敏感なので、水換えによる変化で弱ってしまうことも少なくありません。頻繁な水換えは厳禁です。
1ヶ月ほどそのままで、しっかり餌を食べて泳ぐようになったら、水槽の1/5程度の水換えをしましょう。頻度は3週間に1度ほどで問題ありません。
ただ、とても小さな水槽で飼育していたり、餌の量が多かったりして水が汚れがちな場合は、水換えをする必要があります。
また、エアレーションは吐出量を最小にしてエアーストーンで行うことをおすすめします。強い水流は親同様、苦手です。
パラダイスフィッシュ(タイワンキンギョ)の飼育・繁殖方法を徹底解説!
今回はパラダイスフィッシュの飼育・繁殖方法を解説しました。
- 丈夫で飼育が簡単
- 室内であれば無加温飼育できる
- 繁殖にも挑戦できる
飼育のハードルが低く、それでいて繁殖も楽しめて、見た目もきれい。
コアなファンもいるほど魅力的な魚なので、興味をお持ちの方は飼育、そして繁殖に挑戦してみてください。